大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(う)1998号 判決

判決理由〔抄録〕

所論の一は、原判決が、原判示きりん橋上で自動車と歩行者とがすれ違う時は、自動車において一時停車しなければならない義務があるとしたことを論難するのであるが、原判決の判示第一事実に対応する挙示の証拠(司法巡査作成の実況見分調書に添付の自動車検査証写を含む)によれば、原判示きりん橋上の本件事故発生現場には、自動車等の車輛の進行に便ならしめるため、橋の中央部、即ち車輪の走行する箇所に、巾約六十糎、厚さ約十糎の木の板が約九十糎の間隔を置いて二条、橋に平行して敷かれてあり、各敷板の外側線とそれに対応する欄干との間には僅か約八十糎の余裕しかなく、自動車が橋上を進行するとその左右両側を歩行者が漸く歩行することができ、すれ違う時その両者間には余裕という程の余裕はないことが認められるから、

(一) 自動車の車巾がこの二条の敷板の外側線間の間隔約二米十糎を超える場合は勿論のこと、それ以下の場合においても(前掲自動車検査証写によれば、本件自動車の車巾は一米六九・五糎である)、敷板上における車輪の位置、自動車の速度、運転の仕方の如何によっては、車体が左右にゆれ又はずれる等して各敷板の外側線とそれに対応する欄干との僅か約八十糎の間隔が更に短縮される結果自動車と歩行者とがすれ違う時に自動車の車体が歩行者の身体に接触するか又は歩行者の被服若しくは携帯荷物を引っ掛ける等して人の死傷又は物の損壊の事故を惹起する虞れがあるので、自動車を運転する者は、若し橋上に歩行者のあることを認めたときは、すれ違う前から徐行の態勢をとり、すれ違う時は予じめ手前で一時停車し、歩行者の挙動を良く見極めた上で再び発進徐行すべく、以て前叙事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があり、

(二) 況して本件事故発生当時の如く、折柄の降雨のため前記敷板が濡れ、その表面が車輪の滑り易い状態になっている場合においては、前叙事故を惹起する虞れが一層大きいので尚更厳格に右の注意義務を履行すべき必要のあることは多言を要せず、

所論の点についての原判示は正当である。

所論原審証人杉原勝雄の供述は、原判示きりん橋上で自動車と歩行者とがすれ違うとき自動車において一時停止しなくても単に速度を落せば、歩行者が横向きになったり若しくは一方の端に身体をすり付けなくても普通にすれ違いができ、両者が接触することはないと思う、しかし、そのすれ違う際両者間には余裕という程の余裕はない、トラックが橋を通る時橋は多少ゆれる、敷板が乾いていれば車輪の横すべりは余りないが、雨のため濡れておれば車輛はすべり易いと思うというのであって、原判決認定の如く、折柄の降雨のため前記敷板が濡れ、その表面が車輛のすべり易い状態になっている場合において、四輪貨物自動車が時速約二十五粁のまま右橋上で対面歩行者相原軍三に近接し同人とすれ違う際にも普通にすれ違いができ、両者が接触する虞れはないという趣旨には解せられないから、たとえ所論の如く、当時相原軍三が橋の一方の端一杯に身体をすり寄せて歩行していたとしても、右証人杉原勝雄の供述は、原判決が自動車側に一時停止の義務があるとした判示に抵触するものとはいえない。

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